続き・・・。
それから十数年・・。
この一本気な親方の会社は、堅調な業績を納めた。
税務担当の私も、この会社と共に成長した。
いや、育ててもらったと言ってもいい。
意見が対立することはしばしばあった。
ときには大ゲンカもした。ミスもした。(けっこう多かったと思う)
とにかく、よく怒鳴られた。
しかし、けっしてクビにされることはなかった。
むしろ、若い私の意見を信用し、
大抵のことについて受け入れてくれた。
事務員を採用してくれといえば、採用し。
ファックスを買ってくれといえば買い・・。
若い衆の福利厚生を充実してくれ、と言えばそうし・・。
何時も時間はかかる人だったが、
最後には・・、
『わかった。わかった。お前がそうしろっていうなら、そうするよ。』
・・と、にっこり笑顔
義理人情のがんこ親父・・・・、親方が親方たる所以である。
そんな親方も、もうずいぶんな御歳・。
5年くらい前には大きな病気もし、
かつての気力・体力は見る影もない。
ここ数年は、入退院を繰り返し、会社に来るのがやっとの状態。
ソファーで寝っ転がる日々が続き、思考・言動・記憶力もかなりあやしい・・・。
事務員がいつかないようになり、従業員も1人やめ、2人やめ・・。
それでも、
『若い衆がいる限りやめられん。』
(若い衆といっても、もう皆還暦を超えているのだが・・。)
気力をつなぎ止めているのは、この思い一点であった。
親族や私の反対を押し切り、損を承知で、親方であり続けた。
昨年、私が税理士となったときには、
『よくがんばったな~。よくやったな~。あの若造がな~。』
・・手を握り、涙を流して喜んでくれた。
覚えてくれていたことが、とてもうれしかった。
親方の中では、私も気がかりな若い衆の一人なのである・・。
しかし、この度、親族、若い衆(私を含む)、関係者の強い説得で、
ついに、ついに会社を解散することとなった。
『 もう、十分だよ親方・・。もうやめもいいんだよ親父・・・。』
・・その幕引きの事務手続は、もちろん私の役目。
最後の大仕事。完璧にやりとげたいと思っている。
そんな中、
先日、謀会社(親方の会社のメインの取引先)が、
『この件で話がしたいので会いたい』
・・と怒り口調で電話がかかってきた。 ・・・・続く。
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