THE 親方(親方の3)

続き・・。

なぜか気に入られたらしい。

うちの若い衆に紹介するからと、

『 今度うちの帳面をやることになった
 中川さんとこの若い衆だ~。
 根性だけは、ありそうだから、かわいがってやってくれや~

と、工場の中を連れまわされた・・。


一事が万事、こんな感じである・・・。



義理人情に熱く、親分肌・・、

THE親方 、 である。


マニュアルなど一切通用しない。


税金を払うなど、とんでもない。帳簿はつけない。
税務署なんて、○○くらえ、すぐ怒鳴る。

とんでもない親父であった。(ちょっとくせがあるどころではない。)



1年くらいは毎月ケンカ。

訪問する度に、

『きやがったな、若造が~。今日こそこらしめてやる』

てな感じで、こちらもこちらで鼻息あらく、

『今日こそギャフンと言わせてやる~。』

・・と、未成熟な理論武装に余念がない・・。


この会社に、税務指導、帳簿監査なんて概念はない。


やってくることは、半日この親父と口論すること。

帰りに、ダンボールにゴミのように入っている書類を回収・・。

これが、担当としての仕事であった。


鶏が先か、玉子が先か、ぶつかることは後を絶たない・・。

しかし、なんといっても新人・・。非は大抵こちらにある。


ある時、税務上の処理でとんでもないミスをしてしまった。

たぶん、これでクビ決定間違いなし。
小生意気な性分が、完全に裏目に・・。

事務所の責任問題にも発展しかねない・・。

真っ青  になり、会社に飛んで行った。

親方に詫びた。

『僕の不注意で、とんでもないミスをしてしまいました。
親方に、何十万円も損させてしまいました。
すみません。すみません。』


親方は、

『 ばかやろ~、ふざけるんじゃね~。だから、いつもいってるじゃね~か~。』

と、真っ赤な顔  をして私を怒鳴りつけた。




私は、完全に凍りついた。

事の重大さに、返す言葉もなく、ぶるぶる震えた・・。

立ちすくんで、親方の目を見つめるしかなかった。






一瞬の後・・、

親方の眼から、怒りがす~とひいていくのがわかった。


すると、いままで見たこともない、やさしい笑顔  で・・



『 ミスをしたんなら、仕事でとりかえせばいい。  

 お前さんは、まだ若造だ。

 ま、気にすんなや。  』  



ポンポンっと、震える私の肩を叩いた。




『 あっ、あとな~。お前んとこの親方には黙っとけよ。

  若い衆のミスはな~、親方がケツを拭くってもんだ。

  おりゃ~、おめ~にまかせたんだぜ~。

  めんどくせ~のは嫌いだからよ~。 』






ちょっとくせのある人。親方はこのような人であった。    ・・・続く。

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