出会い(親方の1)

平成2年の春・・。

中川事務所に入社して半年・・。
会計事務所職員として、いよいよ関与先を担当することとなった。

当時24才・・。
それまで半年間は、毎日、所内で伝票整理や先輩の手伝い、電話対応の日々・・。

「俺、大学まで卒業したのに、なにやってるんだろう・・、
早く、一人前の仕事がしたい。いったいいつまでこんな日々が続くんだろう。」

若い頃は、時間がたつのが非常に遅い。
今思えば、たった半年の研修期間。
おそろしく、長い期間に感じられた。

一人前の仕事といえば、「巡回担当者」(顧問先の担当者)になること。

「巡回担当者」である先輩達は、キラキラ、キラキラ  輝いていた。

いつかくるであろう、チャンスに備え、必死に先輩の仕事ぶりを勉強した。

先輩からは、

「とにかく勉強すること、努力することだよ。」

と教わった。


その先輩から紹介された1冊、

「会計事務所職員必携、巡回監査マニュアル(TKC監修)(だったかな?)

という本は、非常に役に立った。

マニュアルという言葉が、ようやくとりざたされるようになった時代。

会計事務所職員マニュアルという点では、当時としては活気的な本であった。

職業会計人としての有るべき姿、業務の心構えから、伝票の書き方、領収書の整理の仕方、顧問先に対する指導方法等、
巡回担当者として、すべき仕事が網羅的に、事細かに記されていた。
(このような点では、いまでもTKCという会社は、すばらしい会社だと思っている。)

とにかく、この本は何十回も読み返した。
僕の職業会計人としての基礎、正にマニュアルとなった。



そんな折、ついにチャンスが来た。

所長から、
「山口君も、そろそろお客様をもつかね?」
・・と。


まってましたの一言。

「このチャンスは絶対ものにせねば・・。」

がぜん、はりきった。


5~6件、簡単なところから・・・ということで、先輩方から暖簾わけ。

緊張と不安もあったが、担当顧問先を与えられたことは、とても、とてもうれしかった。
初めてのお客様、とにかく一生懸命仕事に取り組んだ。

少し慣れてきた、確か、5月頃。
また、新たなお客様を担当することとなった。

先輩から資料を引継ぎ、
「ちょっとくせのある人だけど、がんばって。」
・・と言われた。

「わけありの会社なのかな?」
・・と、不思議に思ったが、

とにかく、「一度挨拶に行って来なさい」ということなので、
ひとりで訪問することになった。

「ごめんくださ~い。中川事務所のものですが~。


・・と元気良く、会社を訪ねると・・・・。


工場の奥から大声が・・。


「こっちこいや~」



・・おそるおそる、声のする工場の戸を開け、中に入っていくと、




ボロボロの作業着に、ブリキを手に持った、

おそろしい顔をした「おっちゃん」が仁王立ち  ・・、


「ああ~ん。中川事務所だと~。

若僧!おめ~が今度の担当か~。」




と、グイと胸ぐらを捕まれた・・・・・・。   続く。

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